傷つけたくない 抱きしめたい
「え……いいの?」

『上に着たままだと泳げないけど、水に足つけるくらいならできるし、あとは砂浜のほうで待ってるとか』

「あ、うん、それでいいよ。よかった、なんかほっとした」


ありがとう、と呟くと、梨花ちゃんはくすくすと笑いながら『どういたしまして』と答えてくれた。


『でもさ、さすがにスクール水着に上着ってわけにもいかないから、お金が大丈夫そうなら、普通の水着買いなよ』


お金は、お小遣いとお年玉をほとんど使わずに貯金してあるから、大丈夫だ。


『ねえ、せっかくだから、一緒に買いに行かない?』

「え?」

『私も新しい水着欲しいなって思ってたんだよね。今もってるの、中一のときに買ってもらったやつなんだけど、背が伸びたせいかちょっと窮屈で。美冬がよかったら、明日か土曜日の午後か、どう?』


友達と買い物に行くなんて、いつぶりだろう。

たぶん小学校の五年生以来くらいだ。


嬉しくて声が上擦るのを自覚しながら、私は「うん、行こう」と答えた。


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