傷つけたくない 抱きしめたい
それは私も感じていた疑問だ。

遠藤くんを補助することは大事だと思うけれど、人選が意外だった。


三浦くんは分かる。

首席入学で新入生代表の挨拶をしたくらいだし、授業でも指名されても答えられないことはなくて、とても賢いのが伝わってくるから。


染川さんも、会話のテンポを聞いていると頭の回転が早そう。


でも、なぜ私が選ばれたのかは全く分からない。

さして頭も良くないし、人付き合いも下手なのに。

しかも、遠藤くんに嫌われているのに。



そんな私の思いをよそに、先生が三浦くんの質問に答えている。


「いや、これ以上ない人選だろ。まず、部活やってるやつは放課後残って教えたりできないから無理だろ?」


そういえば、私はもちろんのこと、意外にも染川さんも三浦くんも帰宅部だ。


「で、帰宅部連中の中で誰がいいかと考えた場合、三浦は当然だよな? なんたって首席だし」


先生がからかうように言うと、三浦くんは頭を掻きながら「照れちゃうなあ」と笑った。


「特にオリエンテーションテストで理数系が良かったから、数学と理科を教えてやってくれ」

「しょうがないなあ、クラスメイトのために一肌脱いでやるか!」


三浦くんが振り返って笑いかけると、遠藤くんはぷいっと横を向いてしまった。


「あと、染川はほら、帰国子女だから、英語得意だろ? お前は英語担当な」


当たり前のように言った先生の言葉にどよめきが起こる。


「えっ、そうなの? 染川さんって帰国子女なの?」

「マジで? 知らなかった!」

「すごーい」


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