傷つけたくない 抱きしめたい
*
「……ええと。じゃあ、とりあえず、自己紹介からいくか」
放課後の教室。
先生に指名された三人と、遠藤くん。
普段では絶対にありえない組み合わせの四人で向かい合うと、しばらく気まずい沈黙が流れて。
それから、三浦くんが空気を変えるように口を開いてくれた。
「三浦、たまにはいいこと言うじゃん。やっぱり最初は自己紹介だね」
染川さんが三浦くんの言葉に頷き、遠藤くんに向かってにっこりと笑いかける。
「じゃ、私からいくね。染川梨花、北中出身。よろしくね、遠藤くん」
遠藤くんはちらりと目を向けただけだった。
きっと、それが彼なりの最大限の挨拶なのだろう。
「俺は、三浦嵐。中学は港南だよ。よろしくな、遠藤」
三浦くんも人懐っこい笑みで遠藤くんに声をかけ、すっと右手を差し出す。
遠藤くんは迷惑そうに眉をひそめて、それでもゆっくりと身を起こすと、手を出して三浦くんと握手をした。
あの無愛想な遠藤くんが握手に応えるなんて、と驚いてしまったけれど、男の子に対しては少しは壁が低いのかもしれない。
ぼんやりと三人の様子を見ていると、三浦くんと染川さんの視線が私に集まった。
次は私の番だ。
心臓がばくばくと音を立てはじめる。
遠藤くんだけは、いつものように窓の外を見ていた。