傷つけたくない 抱きしめたい
「で、どの教科やる?」


染川さんが言うと、三浦くんが「そうだなあ」と首をひねり、


「どういうやり方がいいかな。たとえば一教科三十分ずつ、とか決めて、各教科を毎日少しずつやるか」

「なるほど、よさそう」

「それか、今日は国語、今日は数学、って感じで一日に一教科ずつにして、各担当者と雪夜で、」

「それは嫌だ」


三浦くんの言葉を遮るように、遠藤くんが言った。

強い声だった。


三浦くんと染川さんがぱっと遠藤くんを見る。


遠藤くんは険しい表情で、


「そいつと二人きりにだけはなりたくない」


と三浦くんに告げる。

そいつ、というのが私を指していることは、誰にでも分かった。


私は息苦しくなって俯く。


「……おい、雪夜。いくらなんでも、言い過ぎだろ」

「そうだよ。昨日から思ってたけど、なんなの? どうして美冬にだけそんな反応なわけ?」


三浦くんと染川さんが説得するように言ってくれたけれど、遠藤くんは何も答えない。


「なんとか言いなさいよ」


染川さんが遠藤くんの顔をのぞきこむようにして言うと、三浦くんが「まあまあ」と彼女の腕を引いて止めた。


「こいつにもなんか事情があるんだろ」

「でも、無視とか暴言とか、ひどすぎでしょ」

「こいつは昔から無口だし、のくせに口悪いし、でもそれほど悪気があるわけじゃないんだよ」


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