傷つけたくない 抱きしめたい
三浦くんの言葉に、私と染川さんが同時に「えっ」と声をあげた。


「昔から?」


染川さんが怪訝そうな顔で三浦くんと遠藤くんを交互に見る。

三浦くんは一瞬、ばつの悪そうな表情になったものの、すぐにけろりと笑った。


「いや。昔ちょっとな、知り合いだったんだよ、俺と雪夜」

「えっ、そうなの? 中学おなじ?」

「いや、違うけど」

「じゃあ、どういう知り合い?」


染川さんがさらに訊ねると、三浦くんはちらりと遠藤くんを見て、それから染川さんに向き直った。


「ま、男同士には色々あるんだよ」


おどけて答える三浦くんに、染川さんは「なにそれ、意味深!」と笑ったものの、それ以上は何も訊かなかった。

話したくない事情でもあると思ったのかもしれない。

染川さんはとても気づかいができる人だな、と思った。



「ま、それはさておき。話戻すぞ? 毎日五教科を少しずつやるってことでいいか?」


三浦くんが言うと、染川さんが頷いた。


「でもまあ、それだと大変だし、国数英は毎日で、理科と社会は交代とかにしよう。そしたら二時間くらいで終われるでしょ」

「ああ、そうだな。じゃ、四時開始で、六時までってことで」


二人でさくさくと決めていく。

リーダーシップがあるなあ、とさらに感動した。

私はこういう場面では黙って周りの言うことを聞いていることしかできない。


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