29歳、処女。
LESSON 2
LESSON 2
Fashion
*
「おい、雛子! こっちだ!」
おしゃれなスペインバルに入店したとたん、奥のほうから遠慮も配慮もない大声で私を呼ぶ声。
私は慌てて、その声の持ち主のほうへ、足早に向かった。
「ちょっと、喜多嶋さん………声、大きいですよ」
喜多嶋さんの向かいの席に腰をおろしながら、私はこそこそと言った。
案の定、店じゅうの人たちがこちらに視線を向けていて、居心地が悪いったらありゃしない。
「遅いぞ、雛子! お前のせいで待ちくたびれて、そりゃ声も大きくなるってもんだよ」
私のいたたたまれなさになど気づく様子もなく、喜多嶋さんはむすっと腕を組みながら、不機嫌そうに言う。
「ったく、先輩を待たせるなんて、いい度胸してるな。ビールでいいか?」
「あっ、はい」
「すみませーん、注文いいですか」
喜多嶋さんは私にかまうことなく、手をあげて店員を呼び、ちゃきちゃきと注文を済ませた。
「あの、お待たせしてしまって、申し訳ありませんでした」
店員が去ってから、私はテーブルに両手をついて頭をさげ、喜多嶋さんに謝罪をする。
いつものように叱られる前に謝れたので、きっと褒めてもらえるだろう、と思ったんだけど。
Fashion
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「おい、雛子! こっちだ!」
おしゃれなスペインバルに入店したとたん、奥のほうから遠慮も配慮もない大声で私を呼ぶ声。
私は慌てて、その声の持ち主のほうへ、足早に向かった。
「ちょっと、喜多嶋さん………声、大きいですよ」
喜多嶋さんの向かいの席に腰をおろしながら、私はこそこそと言った。
案の定、店じゅうの人たちがこちらに視線を向けていて、居心地が悪いったらありゃしない。
「遅いぞ、雛子! お前のせいで待ちくたびれて、そりゃ声も大きくなるってもんだよ」
私のいたたたまれなさになど気づく様子もなく、喜多嶋さんはむすっと腕を組みながら、不機嫌そうに言う。
「ったく、先輩を待たせるなんて、いい度胸してるな。ビールでいいか?」
「あっ、はい」
「すみませーん、注文いいですか」
喜多嶋さんは私にかまうことなく、手をあげて店員を呼び、ちゃきちゃきと注文を済ませた。
「あの、お待たせしてしまって、申し訳ありませんでした」
店員が去ってから、私はテーブルに両手をついて頭をさげ、喜多嶋さんに謝罪をする。
いつものように叱られる前に謝れたので、きっと褒めてもらえるだろう、と思ったんだけど。