29歳、処女。
「ところでお前は、この問題をどう分析してる?」



締めのパエリアを食べながら、喜多嶋さんが唐突にそんなことを訊ねてきた。


なんの前ふりもなかったので、私はスプーンを握りしめたまま、きょとんとして喜多嶋さんを見つめ返す。



「だから、ぼうっとすんな」



喜多嶋さんは顔をしかめて、私の額にチョップをくらわせてきた。

痛い。

けど、もちろん文句なんて言えないので、私は黙っておでこを押さえる。



「いつも言ってるだろ? 問題が起こったら、まずはその原因を客観的に分析する」


「はい」


「そして、解決策を複数考えて、その中で最善の策を実行に移すんだよ。わかったか?」


「はい」


「よし、じゃ、分析してみろ。お前がなぜ三十路目前になってもまだ男を知らずにいるのか」


「………」



やっぱりデリカシーのかけらもない言い方をされて、かなり傷ついたけど、

酔いがまわりはじめたせいか、もうどうでもいいや、という気分になってきた。



「………たぶん、女としての魅力っていうか、色気みたいなものが、足りないんですよね」



神妙な顔で言うと、喜多嶋さんがぷっと噴き出した。

それから、けらけらと笑っている。



「………なんで笑うんですか」



むっとして訊ねると、喜多嶋さんは「お前がアホだからだよ」と返してきた。




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