29歳、処女。
「ああ、待たされたよ。こんだけ待たせたからには大したもん見せてもらえるんだろうな」



ドアの隙間から顔を覗かせている私に、喜多嶋さんがにんまりと笑いかけてきた。



「もう、ハードル上げないでくださいよ………」


「早く見せないと、どんどん上がるぞ」


「やめてください!」



私は意を決して試着室を出た。



「………」



喜多嶋さんは腕組みをしたまま、無言で私を見つめる。


また緊張が高まってきた。



喜多嶋さんが選んでくれた青いニットのカットソーは、私がいつも着ているものよりずっと、襟ぐりが大きく開いている。


鎖骨が見えるほど胸元が開いた服なんて着たこともなかったから、本当に落ち着かない。


それに、膝が丸見えのスカートも、驚くほど恥ずかしい。



「………へ、ん、ですよね。すみません、すぐ脱いできます」



顔をうつむけて試着室に戻ろうとした、その瞬間。



「こら、待て。脱いでこいなんて言ってないだろ」



喜多嶋さんはそう言って、私の腕をぐっとつかんだ。


そのままぐいっと引き寄せられる。



「もっとよく見せろよ」



両肩をつかまれ、その場につなぎとめられる。




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