29歳、処女。
私の憧れの人・相羽さんと同期で、一番の仲良し。

しかも相羽さんと同じようにとても優秀な人で、二人そろって『若手のホープ』と呼ばれている。


………でも。



「『すみません』じゃなくて『申し訳ございません』、だろ? 何回言わせるんだよ」


「ごめ、あっ………申し訳ございません」


「あと、ミスしたときは『すぐに訂正いたします』を必ずつける! いつも言ってるだろうが」


「あ………忘れてました」



喜多嶋さんは、どうしようもないな、というように深いため息をついた。


私は恐ろしさと申し訳なさで、肩をすくめて縮みあがる。



「ったく、お前はいつまで経っても………。とりあえず、さっきの発言、やり直し!」


「ええ? ええと……『申し訳ありませんでした、すぐに訂正いたします、喜多嶋さん』……ですか?」


「よろしい。しかしなあ、いつもいつも説教の手間かけさせやがって」


「すみません………」


「は?」


「あっ、申し訳ございません」



―――喜多嶋さんは、優しい相羽さんとは正反対。


ものすごく厳しくて、容赦がなくて、とてつもなく怖い先輩なのだ。



私にとっては直属の先輩ではないんだけど、わざわざ私の仕事を覗きに来ては怒っていく、という行為を繰り返している。


初めは、なんで私ばっかり怒られるんだろう、とも思ったけど。


よく見ていると、喜多嶋さんはあらゆるところで後輩を叱ったり、自分の同期にも文句を言ったり、たまに上司にも楯突いていたりするので、

最近は『喜多嶋さんはそういう人なんだ』、と諦めている。



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