29歳、処女。
LESSON 5
LESSON 5
Last Lesson - Makeup
*
電車を降りて駅を出て、夜道を並んで歩く。
………手をつなぎながら。
このままだと吐いてしまうんじゃないかというくらい、心臓がばくばくと動悸しつづけている。
あと数分も歩けば喜多嶋さんの住むマンションに着くはずだ。
でも、それまで心臓がもちそうにない。
「………あのー、喜多嶋さん」
「あ?」
喜多嶋さんが見下ろしてくる。
「これはいったい、どういう状況なんでしょうか」
「その質問、二回目だな」
「いえ、でも、さっきと状況がちがうので」
私はつないだ手に視線を落とした。
すると喜多嶋さんの手にぎゅっと力がこめられる。
「これか? 捕獲してるんだよ」
「………捕獲」
「逃亡されないようにな」
喜多嶋さんが余裕の笑みでにやりとした。
「………しませんよ、逃亡なんて」
「そうか? ならいいけど」
そう言いつつも喜多嶋さんは手を離さない。
私は諦めてされるがままにすることにした。
無言のまま歩きつづける。
でも、頭はまだぼんやりしていて、自分の置かれた状況がつかみきれない。
喜多嶋さんは何を考えているんだろう?
追いかけろとか、告白しろとか言っておいて、
『行かせない』と言った。
Last Lesson - Makeup
*
電車を降りて駅を出て、夜道を並んで歩く。
………手をつなぎながら。
このままだと吐いてしまうんじゃないかというくらい、心臓がばくばくと動悸しつづけている。
あと数分も歩けば喜多嶋さんの住むマンションに着くはずだ。
でも、それまで心臓がもちそうにない。
「………あのー、喜多嶋さん」
「あ?」
喜多嶋さんが見下ろしてくる。
「これはいったい、どういう状況なんでしょうか」
「その質問、二回目だな」
「いえ、でも、さっきと状況がちがうので」
私はつないだ手に視線を落とした。
すると喜多嶋さんの手にぎゅっと力がこめられる。
「これか? 捕獲してるんだよ」
「………捕獲」
「逃亡されないようにな」
喜多嶋さんが余裕の笑みでにやりとした。
「………しませんよ、逃亡なんて」
「そうか? ならいいけど」
そう言いつつも喜多嶋さんは手を離さない。
私は諦めてされるがままにすることにした。
無言のまま歩きつづける。
でも、頭はまだぼんやりしていて、自分の置かれた状況がつかみきれない。
喜多嶋さんは何を考えているんだろう?
追いかけろとか、告白しろとか言っておいて、
『行かせない』と言った。