世界が止まる1分間
雪奈さんの言葉、花音の言葉。

脳の中で反芻する言葉に、ひとつの可能性を見いだす。

もしかしてこれは、


「時間が繰り返されている?」


口に出して、いやそんな訳がないと首を横に振った。

ありえない、だって、そんなこと。


「ねえ、伊月、知ってる?今日の体育、長距離走じゃなくてバレーの試合らしいわよ。昨日の雨のせいで」


昨日も、体育でバレーをした。その前日の雨でグラウンドが使えなかったから。

というか、体育が二日連続だなんてそんな予定可笑しい。だって今日は、体育の授業の予定なんてなかったはずだ。

黒板の横に書かれた授業の予定表を見て愕然とした。

そこには昨日と同じ時間割が書かれている。


「どうしたのよ、伊月?」


花音の声が遠くに聞こえる。


自分の言葉が現実味を帯びる。

でも、きっと、明日になれば元通りのはずだ。自信のない根拠を持つと僕は花音の方を見て「何でもない」と笑った。


「今日こそは言いなさいよね!」

「へ?」

「雪奈に、好きって」

花音の言葉に僕は「無理だよ」と首を振った。

ありがとうの言葉で満たされてしまうほど、僕は意気地が無いのに。
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