時涙ー携帯が繋ぐ奇跡ー
携帯電話の向こう側
「他に好きな子が出来たから別れよう。」
そう、彼氏から突然メールが来た。
授業中にも関わらず、彼氏からメールってだけでコソコソと携帯を開いて見た自分が滑稽に思えた。
まさか、こんな内容だとは…。
隠されて浮気をされるよりは全然良い…。だけど…
(優しいところとか、好きだったのにな…。)
「竹中半兵衛が稲葉山城をー…」
先生が速やかにチョークを動かして黒板に書いていく。
現在は戦国時代の勉強で、私が一番好きな時代だ。
泰平の世のために戦う。
そんな偉人達はカッコイイと思う。
(…どこかにいないかなぁ。こう言う人…。頭が良くて、強くて、そう、先生が今話している竹中半兵衛みたいな人。)
いるわけないか…。
そう自分に言い聞かせて携帯をパタリと閉じた。
その後、日本史の授業を終えた私は、彼氏に「分かった。」と一言だけのメールを返した。
今日の気分は、最悪。
彼氏にはフラれるし、日本史では宿題をドッサリと出された。
日本史は好きだから、普段は宿題なんてどうってことはないのだが、今は…正直そんな気分じゃない。
そんな憂鬱な気持ちのまま帰路を急いだ。
「はぁ…、疲れた…。」
家に帰った私はと言うと、ドサッと自分の部屋に倒れ込んだ。
疲れた心を癒すためにサイト巡りをしようと、携帯が入っているであろうスクールバックに手を伸ばし、中を探る。
「あ…れ…?」
いくらバックの中を探してみても携帯が見当たらない。
まさか、落とした…?
その考えが頭に浮かんだと同時に身体全体の血の気が引いた気がした。
落としたと言っても、携帯ならいつもチャック付きの安全な場所に入れておいたはずだ。
バックに穴が空かない限り、落とすはずがない。
歩きながら携帯を使っていたわけでもない。
「そもそも、携帯をバックに入れたっけ?」
よく思い返してみれば、携帯をバックに入れた記憶が曖昧だ。
もしかしたら、学校に置き忘れたのかもしれない。
「だとしたら…戻るの面倒臭いなぁ…」
はぁ、と大きな溜息をついた後、渋々学校へと向かった。
学校へ着くと、放課後残っていた友人が不思議そうな表情で駆け寄ってきた。
「茜、どうしたの?忘れ物?」
「うん、携帯がなくて。学校かなぁってさ。」
そう事情を話すと、友人も一緒に探してくれた。
が、いくら探しても見つからない。机の中も、ロッカーの中も。
「おっかしいなぁ。…もし持ってたら、落とすはずがないんだけどな…。」
そう言いつつも、さすがにここまで見つからないとなると不安になってくる。
もし、本当に落としていたとしたら…?
もしかしたら、悪用されるかもしれない。
「本当にないねぇ…私の携帯で茜のに掛けてみる?音でどこにあるか分かるかも。」
嫌な考えがグルグルと脳内を支配していく中、ハッと友人の声で我に帰る。
確かにそれは良い考えだ。
「ごめん、じゃあ掛けてもいい?」
申し訳なさそうに手を合わせてお願いすると、友人は「いいよー。」と言って快く承諾してくれた。
携帯を耳に当て、私の携帯に電話を掛けてみる。
誰も出るはずがないのだが、耳に当ててしまうのは反射的な何かだろう。
プルルルル―…
プルルルル―…
呼び出し音が途切れることなく続いている。
が、私の携帯の着信音はしない。
少なくともこの教室にはないようだ。
着信音が鳴らないのを確認し、電話を切ろうとすると、途切れることなく続いていた呼び出し音が途切れた。
それは、誰かが私の携帯に出たことを意味していて…。
消えかけていた嫌な考えが、再び私の脳内を支配していった。
一体、今私の携帯を持っている人は誰なんだろう。
自分が悪いと言えど、少し、気持ち悪い…。
「……………。」
受話器の向こう側の人間は何も話そうとしない。
それが余計に気味が悪い。
「……あの、……貴方は誰ですか……?」
痺れを切らした私が受話器の向こう側の相手に問い掛ける。
心臓がドキドキと五月蝿いくらいに鳴り響く。
「……………え…?」
その直後に聞こえたのは蚊の鳴くような男の子らしき声。
その声は受話器の近くで発せられた言うよりも、どこか受話器とは離れた所で発せられたように聞こえた。
「あの…!…っその携帯…!」
プッ…ツー…ツー…
私が用件を言う前に電話を切られてしまった。
拾った携帯だとは相手も分かっているだろうに、その持ち主から電話が掛かってきたら切るとは…。
「誰か出たの…?」
私が携帯片手に呆然としていると、今までの事を全て見ていた友人が不安げに聞いてくる。
「うん…男の子、かな?…ごめん、自分の携帯じゃないのに…。」
携帯を友人に返すのと同時に謝罪も入れる。
「ううん、気にしないでいいよ。」
私の友人は優しいもので、そんな私にニコッと微笑みながら言う。
「それより、茜の携帯はどうするの…?」
「うーん…やっぱり、こうなった以上は親に話すしかないよね…。」
親には一番言いたくなかった。何しろ、私の親は怒ると相当恐い。
携帯を紛失したなんて言ったら、鬼の形相で怒るだろう。
ああ…憂鬱だ…。
そう思い、教室の窓の外を一瞥すると、辺りは真っ暗になっていた。
相当長い間、携帯を探していたのだろう。
友人には本当に悪いことをしてしまった。
「長い間ごめん、一緒に探してくれてありがとう。そろそろ、帰ろっか。」
向き直って友人にそう告げると、友人は得に気にしてないとでも言うように笑ってみせる。
そして二人で学校を後にした。
そう、彼氏から突然メールが来た。
授業中にも関わらず、彼氏からメールってだけでコソコソと携帯を開いて見た自分が滑稽に思えた。
まさか、こんな内容だとは…。
隠されて浮気をされるよりは全然良い…。だけど…
(優しいところとか、好きだったのにな…。)
「竹中半兵衛が稲葉山城をー…」
先生が速やかにチョークを動かして黒板に書いていく。
現在は戦国時代の勉強で、私が一番好きな時代だ。
泰平の世のために戦う。
そんな偉人達はカッコイイと思う。
(…どこかにいないかなぁ。こう言う人…。頭が良くて、強くて、そう、先生が今話している竹中半兵衛みたいな人。)
いるわけないか…。
そう自分に言い聞かせて携帯をパタリと閉じた。
その後、日本史の授業を終えた私は、彼氏に「分かった。」と一言だけのメールを返した。
今日の気分は、最悪。
彼氏にはフラれるし、日本史では宿題をドッサリと出された。
日本史は好きだから、普段は宿題なんてどうってことはないのだが、今は…正直そんな気分じゃない。
そんな憂鬱な気持ちのまま帰路を急いだ。
「はぁ…、疲れた…。」
家に帰った私はと言うと、ドサッと自分の部屋に倒れ込んだ。
疲れた心を癒すためにサイト巡りをしようと、携帯が入っているであろうスクールバックに手を伸ばし、中を探る。
「あ…れ…?」
いくらバックの中を探してみても携帯が見当たらない。
まさか、落とした…?
その考えが頭に浮かんだと同時に身体全体の血の気が引いた気がした。
落としたと言っても、携帯ならいつもチャック付きの安全な場所に入れておいたはずだ。
バックに穴が空かない限り、落とすはずがない。
歩きながら携帯を使っていたわけでもない。
「そもそも、携帯をバックに入れたっけ?」
よく思い返してみれば、携帯をバックに入れた記憶が曖昧だ。
もしかしたら、学校に置き忘れたのかもしれない。
「だとしたら…戻るの面倒臭いなぁ…」
はぁ、と大きな溜息をついた後、渋々学校へと向かった。
学校へ着くと、放課後残っていた友人が不思議そうな表情で駆け寄ってきた。
「茜、どうしたの?忘れ物?」
「うん、携帯がなくて。学校かなぁってさ。」
そう事情を話すと、友人も一緒に探してくれた。
が、いくら探しても見つからない。机の中も、ロッカーの中も。
「おっかしいなぁ。…もし持ってたら、落とすはずがないんだけどな…。」
そう言いつつも、さすがにここまで見つからないとなると不安になってくる。
もし、本当に落としていたとしたら…?
もしかしたら、悪用されるかもしれない。
「本当にないねぇ…私の携帯で茜のに掛けてみる?音でどこにあるか分かるかも。」
嫌な考えがグルグルと脳内を支配していく中、ハッと友人の声で我に帰る。
確かにそれは良い考えだ。
「ごめん、じゃあ掛けてもいい?」
申し訳なさそうに手を合わせてお願いすると、友人は「いいよー。」と言って快く承諾してくれた。
携帯を耳に当て、私の携帯に電話を掛けてみる。
誰も出るはずがないのだが、耳に当ててしまうのは反射的な何かだろう。
プルルルル―…
プルルルル―…
呼び出し音が途切れることなく続いている。
が、私の携帯の着信音はしない。
少なくともこの教室にはないようだ。
着信音が鳴らないのを確認し、電話を切ろうとすると、途切れることなく続いていた呼び出し音が途切れた。
それは、誰かが私の携帯に出たことを意味していて…。
消えかけていた嫌な考えが、再び私の脳内を支配していった。
一体、今私の携帯を持っている人は誰なんだろう。
自分が悪いと言えど、少し、気持ち悪い…。
「……………。」
受話器の向こう側の人間は何も話そうとしない。
それが余計に気味が悪い。
「……あの、……貴方は誰ですか……?」
痺れを切らした私が受話器の向こう側の相手に問い掛ける。
心臓がドキドキと五月蝿いくらいに鳴り響く。
「……………え…?」
その直後に聞こえたのは蚊の鳴くような男の子らしき声。
その声は受話器の近くで発せられた言うよりも、どこか受話器とは離れた所で発せられたように聞こえた。
「あの…!…っその携帯…!」
プッ…ツー…ツー…
私が用件を言う前に電話を切られてしまった。
拾った携帯だとは相手も分かっているだろうに、その持ち主から電話が掛かってきたら切るとは…。
「誰か出たの…?」
私が携帯片手に呆然としていると、今までの事を全て見ていた友人が不安げに聞いてくる。
「うん…男の子、かな?…ごめん、自分の携帯じゃないのに…。」
携帯を友人に返すのと同時に謝罪も入れる。
「ううん、気にしないでいいよ。」
私の友人は優しいもので、そんな私にニコッと微笑みながら言う。
「それより、茜の携帯はどうするの…?」
「うーん…やっぱり、こうなった以上は親に話すしかないよね…。」
親には一番言いたくなかった。何しろ、私の親は怒ると相当恐い。
携帯を紛失したなんて言ったら、鬼の形相で怒るだろう。
ああ…憂鬱だ…。
そう思い、教室の窓の外を一瞥すると、辺りは真っ暗になっていた。
相当長い間、携帯を探していたのだろう。
友人には本当に悪いことをしてしまった。
「長い間ごめん、一緒に探してくれてありがとう。そろそろ、帰ろっか。」
向き直って友人にそう告げると、友人は得に気にしてないとでも言うように笑ってみせる。
そして二人で学校を後にした。