時涙ー携帯が繋ぐ奇跡ー
自称"名軍師"
家に帰って携帯の話を親に告げると、それはもうこっぴどく叱られた。
親が怒るのも無理はない。
今回私が無くした携帯は新機種なのだから…。
とりあえず、今の携帯は解約をすることになった。
見ず知らずの人が携帯を持っている以上、モタモタしてられない。
携帯を解約して暫く経った後、親に「今度は絶対無くさない」と言う約束で携帯を購入してもらった。
最近CMで流れていて密かに気になっていたピンクの可愛らしい携帯。
案外、携帯を無くして良かったのかもしれない…。と思ってしまう自分がいる。
「あ、茜携帯買ったんだ!」
次の日学校へ登校すると、私の携帯に気付いたらしい友人が話し掛けてきた。
「うん、携帯ないと意外に不便だしさ。」
「そうだよね、茜あれから暫く携帯持って無かったもんね。」
そんなことを友人と話していると、これからまたメールや電話を出来るようになる嬉しさで一杯になる。携帯を無くしていた時は、用件を全て学校にいる間に済ませなければならなかったのだから。
そういう嬉しさもあってか、その日は一日中携帯を使っていた気がする。
携帯の設定をしたり、アドレス帳を整理したりと色々忙しい。
そんな私を見兼ねた母が、「お風呂に入っちゃいなさい。」と部屋に入って来て言うので、一旦携帯を放置して風呂に入ることにした。
気付けばもう23時だ。
家に帰ってきて夕飯を食べてからだから…かれこれ3時間は携帯と睨めっこをしていたことになる。
(こういうのを携帯依存症って言うんだろうなー…)
そんなことを考えながら暫くして風呂から上がると、携帯が鳴っていることに気付いた。
ピリリリリリー…
ピリリリリリー…
出ようと思っても出れる状態ではない。
身体はびしょ濡れ、しかも裸。
父はもう寝ているとは言え、裸で部屋までダッシュするのは気が引ける。
(まぁいいや、後でかけ直そう)
そう思い、身体を拭いて部屋着を着る。
その間もずっと携帯は鳴っていた。
(随分長い間鳴らすな…)
少し不思議に思いながらも自分の部屋へと向かう。
ピリリリリリー…
ピリリリリリー…
部屋に入って携帯を手に取る。
誰からの電話だろうかと携帯の画面を見て背筋が粟立った。
そこに表情されていた番号は、紛れも無く私が前に使っていた携帯の番号で。
「な、なんで…?だって…解約したのに…。」
私の前の携帯を拾った人がまだその携帯を持っていたとしても、使えるはずがない。
それに何よりも不思議なのが、何故、今の私の携帯番号を知っているかということ。
恐い…、そして不気味だ。
このまま携帯を放置しよう。でも、しつこく掛けてきたら…?
あまりの恐怖に手が震え、思考さえも上手く回らない。
何を思ったのか、私はいつの間にか携帯を耳に当てていた。
「…………もしもし…。」
恐怖のあまり声が震える。
だが、受話器の向かう側から帰って来た声はあまりに可愛いものだった。
「もしもし?これって最初に言わなきゃいけないのですか?」
男の子の声だ。この間聞いたのとは違い、クリアな声。
きっと、同一人物だろう。
「な、なんでこの携帯…使ってるんですか!?…使えてるんですか!?」
相手の質問など無視して少し困惑気味に疑問を投げ掛ける。
携帯は解約したのに、使えているなんて絶対におかしいのだ。
「あの、僕の話し聞いてました?その…"けーたい"って、僕が今持ってるコレのことですか?」
どうやらこの男の子は携帯を知らないらしい。
今のこの時代に…?それもおかしい。
だが、嘘をついているようには不思議と思えない。その証拠に、「携帯」の発音がどこか変だ。
「そ、それです…!なんで…使ってるんですか!?」
「え?なんでって聞かれても…。足元に落ちてたから拾って、現在に至る。みたいな感じです…」
ムカッ…とする。何その面倒臭そうな言い方…、コッチは本気で困ってるのに。
「だいたい…!アナタ誰なんですか!?人の携帯から電話なんかしてきて!」
「無礼です!こういう時はご自身から名乗られては?」
本当ムカつく、この餓鬼。挙げ句の果てに無礼だと…。
「じゃあ名乗りますよ。私は茜って言います。」
今の私の言い方は相当トゲトゲしていたと思う。子供相手に大人気ない。
「じゃあ、僕も名乗らないわけにいきません、です。僕は"竹中半兵衛"」
は…?相手がそこまで言った瞬間呆然とする。竹中半兵衛?って、あの名軍師の?
いや、有り得ない。じゃあ同姓同名?この時代に?これも有り得ない…!
「あの…半兵衛さん…、つかぬ事をお聞きしますが…半兵衛ってあの軍師の方ですか…?」
「えへへ、大当りですよ。」
今の言葉で決定した。
受話器の向こう側にいる相手は、歴史上の人物の名を名乗る"不審者"!!
「そうですか…じゃあ私は凄い方とお話しをしてるんですね。とでも言うと思いましたか?迷惑なんです!これ以上掛けてこないで下さい!」
最後にそう言い放って携帯の電源ボタンを連打する。
すると携帯は、プッ、ツー…ツー…と音を立てて切れた。
その夜、自称"竹中半兵衛"から電話が掛かってくることはなかった。
親が怒るのも無理はない。
今回私が無くした携帯は新機種なのだから…。
とりあえず、今の携帯は解約をすることになった。
見ず知らずの人が携帯を持っている以上、モタモタしてられない。
携帯を解約して暫く経った後、親に「今度は絶対無くさない」と言う約束で携帯を購入してもらった。
最近CMで流れていて密かに気になっていたピンクの可愛らしい携帯。
案外、携帯を無くして良かったのかもしれない…。と思ってしまう自分がいる。
「あ、茜携帯買ったんだ!」
次の日学校へ登校すると、私の携帯に気付いたらしい友人が話し掛けてきた。
「うん、携帯ないと意外に不便だしさ。」
「そうだよね、茜あれから暫く携帯持って無かったもんね。」
そんなことを友人と話していると、これからまたメールや電話を出来るようになる嬉しさで一杯になる。携帯を無くしていた時は、用件を全て学校にいる間に済ませなければならなかったのだから。
そういう嬉しさもあってか、その日は一日中携帯を使っていた気がする。
携帯の設定をしたり、アドレス帳を整理したりと色々忙しい。
そんな私を見兼ねた母が、「お風呂に入っちゃいなさい。」と部屋に入って来て言うので、一旦携帯を放置して風呂に入ることにした。
気付けばもう23時だ。
家に帰ってきて夕飯を食べてからだから…かれこれ3時間は携帯と睨めっこをしていたことになる。
(こういうのを携帯依存症って言うんだろうなー…)
そんなことを考えながら暫くして風呂から上がると、携帯が鳴っていることに気付いた。
ピリリリリリー…
ピリリリリリー…
出ようと思っても出れる状態ではない。
身体はびしょ濡れ、しかも裸。
父はもう寝ているとは言え、裸で部屋までダッシュするのは気が引ける。
(まぁいいや、後でかけ直そう)
そう思い、身体を拭いて部屋着を着る。
その間もずっと携帯は鳴っていた。
(随分長い間鳴らすな…)
少し不思議に思いながらも自分の部屋へと向かう。
ピリリリリリー…
ピリリリリリー…
部屋に入って携帯を手に取る。
誰からの電話だろうかと携帯の画面を見て背筋が粟立った。
そこに表情されていた番号は、紛れも無く私が前に使っていた携帯の番号で。
「な、なんで…?だって…解約したのに…。」
私の前の携帯を拾った人がまだその携帯を持っていたとしても、使えるはずがない。
それに何よりも不思議なのが、何故、今の私の携帯番号を知っているかということ。
恐い…、そして不気味だ。
このまま携帯を放置しよう。でも、しつこく掛けてきたら…?
あまりの恐怖に手が震え、思考さえも上手く回らない。
何を思ったのか、私はいつの間にか携帯を耳に当てていた。
「…………もしもし…。」
恐怖のあまり声が震える。
だが、受話器の向かう側から帰って来た声はあまりに可愛いものだった。
「もしもし?これって最初に言わなきゃいけないのですか?」
男の子の声だ。この間聞いたのとは違い、クリアな声。
きっと、同一人物だろう。
「な、なんでこの携帯…使ってるんですか!?…使えてるんですか!?」
相手の質問など無視して少し困惑気味に疑問を投げ掛ける。
携帯は解約したのに、使えているなんて絶対におかしいのだ。
「あの、僕の話し聞いてました?その…"けーたい"って、僕が今持ってるコレのことですか?」
どうやらこの男の子は携帯を知らないらしい。
今のこの時代に…?それもおかしい。
だが、嘘をついているようには不思議と思えない。その証拠に、「携帯」の発音がどこか変だ。
「そ、それです…!なんで…使ってるんですか!?」
「え?なんでって聞かれても…。足元に落ちてたから拾って、現在に至る。みたいな感じです…」
ムカッ…とする。何その面倒臭そうな言い方…、コッチは本気で困ってるのに。
「だいたい…!アナタ誰なんですか!?人の携帯から電話なんかしてきて!」
「無礼です!こういう時はご自身から名乗られては?」
本当ムカつく、この餓鬼。挙げ句の果てに無礼だと…。
「じゃあ名乗りますよ。私は茜って言います。」
今の私の言い方は相当トゲトゲしていたと思う。子供相手に大人気ない。
「じゃあ、僕も名乗らないわけにいきません、です。僕は"竹中半兵衛"」
は…?相手がそこまで言った瞬間呆然とする。竹中半兵衛?って、あの名軍師の?
いや、有り得ない。じゃあ同姓同名?この時代に?これも有り得ない…!
「あの…半兵衛さん…、つかぬ事をお聞きしますが…半兵衛ってあの軍師の方ですか…?」
「えへへ、大当りですよ。」
今の言葉で決定した。
受話器の向こう側にいる相手は、歴史上の人物の名を名乗る"不審者"!!
「そうですか…じゃあ私は凄い方とお話しをしてるんですね。とでも言うと思いましたか?迷惑なんです!これ以上掛けてこないで下さい!」
最後にそう言い放って携帯の電源ボタンを連打する。
すると携帯は、プッ、ツー…ツー…と音を立てて切れた。
その夜、自称"竹中半兵衛"から電話が掛かってくることはなかった。