時涙ー携帯が繋ぐ奇跡ー
君と私を繋ぐもの
あれから数日後。
自称"竹中半兵衛"から電話が掛かってくることは今のところない。
初めて電話が掛かってきた次の日、不安のあまり母に全てを話したが信じてもらえなかった。
着信履歴を見せて信じてもらおうと思ったが、不思議なことに着信履歴にその番号は一つも残っていなかった。
(夢…だったとか?)
証拠が何もない限り夢だったとしか思えない。
(夢だったらいいなぁ。)
どちらかと言うと、夢だと信じたい。見ず知らずの人が解約したはずの私の携帯を持ってて、しかも自由に使っているなんて。
新しい携帯を買ってもらえて嬉しいはずなのに…不安ばっかで気分は最悪だ。
「くっそ~…!あの自称"竹中半兵衛"のせいで!」
今度掛かってきたらどうしてやろうか。とか思ったりするが、次掛かってきた時は出ないのが最善だろう。
見ず知らずの人と話したくなんかない。
そう思っていた時だった。
ピリリリリリー…
ピリリリリリー…
鳴り始めた携帯をポケットから取り出し、直ぐさま相手を確認する。
掛けてきた相手はやはり自称"竹中半兵衛"だった。
絶対に出ない。
つい先程そう決めたはずなのに、知らず知らずの内に携帯を耳に当てている自分がいた。
確か、一回目も知らず知らずの内に出ていたのだ。まるで、"出なければいけない"とでも言うかのように。
「…もしもし?」
「もしもし?茜さんですか?」
声はこの間掛かってきた人物と変わらない、自称"竹中半兵衛"の男の子のようだった。
「そうですけど、まだ何か?」
「うーん…特に僕から用はないのですけど、この"けーたい"とか言うやつ、茜さんのなんでしょ?無いと困るんではないかと…」
何故、それをもっと最初に言わなかったんだろう。確かに無くした当初は困った。だけど今は、新しい携帯がある。
でも、この男の子が持っている携帯をそのまま放置というわけにもいかない。
「じゃあ、返してくれるとでも言うんですか?」
返してもらえるのはありがたい。
が、正直知らない人に会いたくはない。
「うむ、返します。でも、茜さんが僕のところに来てくれないと返せません、です。」
会いに来てくれないと返せない。
そうは言われても、知らない人にわざわざ自分から会いに行くほど私も馬鹿じゃない。
「あの…それは~…」
「僕、戦で結構忙しいし、軍略練らないといけないし…」
急に何を意味不明なことを言い出すかと思えば…、確か貴方は自称"竹中半兵衛"でしたね…。
「すいません、つかぬ事をお聞きしますが…貴方は竹中半兵衛なんですよね?」
「そうですよ?急にどうされた?」
いきなりこの話題を突き付ければ少しは動揺するかと思ったのに、声はとても落ち着いている様子だった。
「そうだと言うなら、何か証拠をお願いします。」
「茜さん面白いですね。証拠なら、茜さんが直接僕に会いに来れば嫌でも分かりますよ。」
受話器の向こう側の声は自信満々にそう告げる。
「今、お願いします。」
「今?そうですね…じゃあ、僕にしか分からないこと、教えて差し上げよう。」
僕にしか分からないこと。そうは言っても、どうせ教科書か何かの本に載っていたことを言うだけだろうと思った。
だけど自称"竹中半兵衛"は現在史実にも遺っていないようなことを言い出した。
遺されていないなら幾らでも嘘をついて誤魔化すことは出来る。
だけど、信用するには十分な何かがあった。
「どうです?信じました?」
受話器の向こう側の声は一息ついてから言う。
一方私は、有り得ない出来事の真実に頭がついて行かず、混乱状態だった。
「…なら、貴方は…私がもし、未来の人間だと言ったら…信じますか?」
いきなりこんなことを言われても信じるわけがない。
私がこの男の子に"竹中半兵衛"だと告げられた時と同じような疑惑を抱くはずだ。
だけど、返ってきた返事は意外なものだった。
「うむ、信じます。」
「…え!?」
思わず自分の耳を疑った。
こんなにもアッサリと信じるなんて…。
「だって…、この変な"けーたい"とか言うやつ初めて見ます。あと…茜さんの反応も何か変だった、ですから。」
「は…はぁ…って、変って私が!?」
相手の話しを、ただポカーンとしながら聞いていると気になるワードが聞こえたのでとりあえず指摘をした。
すると少年らしい小さな含み笑いが聞こえた。どうやら笑うのを我慢しているらしい。
「本当、茜さんって面白いですね。けど…そうなるとコレを茜さんに返せない…。時代が違うんじゃ、どうしようもないです。」
口ではそう言っているが、声は全然困っているような感じではない。
「…じゃあ、その携帯は貴方が持っていてくれませんか?無くしたりしないで下さいよ?」
私は散々悩んだ末にこう告げた。
すると、無くした当人に言われても説得力がない。と言って笑われてしまった。
「無くしたりはしないから御安心を。茜さんと違ってそそっかしくないです、僕は。」
わざとらしくそれだけ言うと、「じゃあ、また後で。」と言って一方的に切られてしまった。
微かに他の人の声が聞こえたから、誰かが近くまで来たのかもしれない。
見付かったら色々面倒だとでも思って切ったのだろうか。
私は、前に自分が使っていた携帯の電話番号を"竹中半兵衛"で登録すると、携帯をポケットに再びしまい、そのまま寝てしまった。
自称"竹中半兵衛"から電話が掛かってくることは今のところない。
初めて電話が掛かってきた次の日、不安のあまり母に全てを話したが信じてもらえなかった。
着信履歴を見せて信じてもらおうと思ったが、不思議なことに着信履歴にその番号は一つも残っていなかった。
(夢…だったとか?)
証拠が何もない限り夢だったとしか思えない。
(夢だったらいいなぁ。)
どちらかと言うと、夢だと信じたい。見ず知らずの人が解約したはずの私の携帯を持ってて、しかも自由に使っているなんて。
新しい携帯を買ってもらえて嬉しいはずなのに…不安ばっかで気分は最悪だ。
「くっそ~…!あの自称"竹中半兵衛"のせいで!」
今度掛かってきたらどうしてやろうか。とか思ったりするが、次掛かってきた時は出ないのが最善だろう。
見ず知らずの人と話したくなんかない。
そう思っていた時だった。
ピリリリリリー…
ピリリリリリー…
鳴り始めた携帯をポケットから取り出し、直ぐさま相手を確認する。
掛けてきた相手はやはり自称"竹中半兵衛"だった。
絶対に出ない。
つい先程そう決めたはずなのに、知らず知らずの内に携帯を耳に当てている自分がいた。
確か、一回目も知らず知らずの内に出ていたのだ。まるで、"出なければいけない"とでも言うかのように。
「…もしもし?」
「もしもし?茜さんですか?」
声はこの間掛かってきた人物と変わらない、自称"竹中半兵衛"の男の子のようだった。
「そうですけど、まだ何か?」
「うーん…特に僕から用はないのですけど、この"けーたい"とか言うやつ、茜さんのなんでしょ?無いと困るんではないかと…」
何故、それをもっと最初に言わなかったんだろう。確かに無くした当初は困った。だけど今は、新しい携帯がある。
でも、この男の子が持っている携帯をそのまま放置というわけにもいかない。
「じゃあ、返してくれるとでも言うんですか?」
返してもらえるのはありがたい。
が、正直知らない人に会いたくはない。
「うむ、返します。でも、茜さんが僕のところに来てくれないと返せません、です。」
会いに来てくれないと返せない。
そうは言われても、知らない人にわざわざ自分から会いに行くほど私も馬鹿じゃない。
「あの…それは~…」
「僕、戦で結構忙しいし、軍略練らないといけないし…」
急に何を意味不明なことを言い出すかと思えば…、確か貴方は自称"竹中半兵衛"でしたね…。
「すいません、つかぬ事をお聞きしますが…貴方は竹中半兵衛なんですよね?」
「そうですよ?急にどうされた?」
いきなりこの話題を突き付ければ少しは動揺するかと思ったのに、声はとても落ち着いている様子だった。
「そうだと言うなら、何か証拠をお願いします。」
「茜さん面白いですね。証拠なら、茜さんが直接僕に会いに来れば嫌でも分かりますよ。」
受話器の向こう側の声は自信満々にそう告げる。
「今、お願いします。」
「今?そうですね…じゃあ、僕にしか分からないこと、教えて差し上げよう。」
僕にしか分からないこと。そうは言っても、どうせ教科書か何かの本に載っていたことを言うだけだろうと思った。
だけど自称"竹中半兵衛"は現在史実にも遺っていないようなことを言い出した。
遺されていないなら幾らでも嘘をついて誤魔化すことは出来る。
だけど、信用するには十分な何かがあった。
「どうです?信じました?」
受話器の向こう側の声は一息ついてから言う。
一方私は、有り得ない出来事の真実に頭がついて行かず、混乱状態だった。
「…なら、貴方は…私がもし、未来の人間だと言ったら…信じますか?」
いきなりこんなことを言われても信じるわけがない。
私がこの男の子に"竹中半兵衛"だと告げられた時と同じような疑惑を抱くはずだ。
だけど、返ってきた返事は意外なものだった。
「うむ、信じます。」
「…え!?」
思わず自分の耳を疑った。
こんなにもアッサリと信じるなんて…。
「だって…、この変な"けーたい"とか言うやつ初めて見ます。あと…茜さんの反応も何か変だった、ですから。」
「は…はぁ…って、変って私が!?」
相手の話しを、ただポカーンとしながら聞いていると気になるワードが聞こえたのでとりあえず指摘をした。
すると少年らしい小さな含み笑いが聞こえた。どうやら笑うのを我慢しているらしい。
「本当、茜さんって面白いですね。けど…そうなるとコレを茜さんに返せない…。時代が違うんじゃ、どうしようもないです。」
口ではそう言っているが、声は全然困っているような感じではない。
「…じゃあ、その携帯は貴方が持っていてくれませんか?無くしたりしないで下さいよ?」
私は散々悩んだ末にこう告げた。
すると、無くした当人に言われても説得力がない。と言って笑われてしまった。
「無くしたりはしないから御安心を。茜さんと違ってそそっかしくないです、僕は。」
わざとらしくそれだけ言うと、「じゃあ、また後で。」と言って一方的に切られてしまった。
微かに他の人の声が聞こえたから、誰かが近くまで来たのかもしれない。
見付かったら色々面倒だとでも思って切ったのだろうか。
私は、前に自分が使っていた携帯の電話番号を"竹中半兵衛"で登録すると、携帯をポケットに再びしまい、そのまま寝てしまった。