私の恋した0.1秒
物心ついた頃から、この名前はあまり好きではなかった。
名前に姫だなんて……
私はそんなスタイルも良くなければ、顔だって良くない。
周りになにか言われたことはないけど、とにかく嫌で嫌で仕方がなかった。
「いいじゃん?とっても似合ってると思うよ、姫乃って名前」
「そんなこと、初めて言われた」
「本当に?姫ちゃんは自信もっていいよ」
イケメンにそう言われると、嬉しいような……
なんて言うか、複雑だ。
「そうだ。姫ちゃんにね、プレゼントがあるんだ」
「プレゼント?」
たまにお店に来るくらいの顔見知りで、初めて今日話した人からプレゼントなんて、意味がわからない。
「うん、きっと姫ちゃん、喜んでくれると思う」
自信満々に言う柳田さんは、少し待ってて?と私を置いて厨房に入っていった。