私の恋した0.1秒
「……これ」
置かれたと同時に香る、甘い匂い。
「期間限定の桃のレアチーズケーキでございます」
「そ、そんなっ、私頼んでません!」
慌てて柳田さんに返そうとする。
だが、それは柳田さんの手によって遮られる。
「それ、僕からのプレゼントだから受け取ってよ。名前教えてくれたお礼」
「そんな…」
名前教えたくらいでお礼なんて…
しかも食べたかった桃のレアチーズケーキ。
「あ、あのお金払います。いくらですか?」
「だからいいって。僕からのプレゼントって言ってるでしょ?」
柳田さんは爽やかな笑顔を浮かべるだけで、私にはなにもさせてくれない。
これじゃあ、タダ食いになってしまう。
そんなのいくらプレゼントとはいえ申し訳ない。
そんな気持ちがグルグルして、なかなか桃のレアチーズケーキに手をつけられないでいた。
「なに、食べないの?なら僕が食べちゃお」
私の前に置かれたスプーンを取って、ケーキの過度を1口すくうとパクッと口に入れてしまった。
「うん、美味い」
あまりにも柳田さんが美味しそうに食べるものだから、グゥ~とお腹がなってしまった。