私の恋した0.1秒
「姫ちゃん、そんな笑顔も出来るんだ」
「へ?」
そう言った柳田さんの頬はほんのり赤く染まっているように感じた。
「どうしたんですか?顔赤いですよ?」
「なっ……夕日のせいだ」
更に頬を染めた柳田さんは、そんな言い訳をしてくるっと後ろを向いてしまった。
「ふふっ、わかりました」
思わず柳田さんの反応に笑ってしまう。
意地悪したお返しですよ。
「そんな笑うなよ」
今度はムスッとした顔でこちらを向く柳田さん。
柳田さんって、面白い人。
私はクスクスと笑いが止まらなかった。
「そんな姫ちゃんにいいこと教えてあげるよ。このスプーン、僕が使ったものだからね?」
「なっ…!」
その事を忘れていた。
柳田さんのスプーンで私は俗に言う〝あーん〟をされたんだ。
これって……間接キス。
意味が頭の中で整理された途端、ぼっと赤くなる私。
暑い、体中が火照るように暑い。
そんな私に、今度は柳田さんが笑っていた。
「いいね、姫ちゃん。やっぱり可愛い」
柳田さんはその大きな手でくしゃくしゃと私の頭を撫でた。