私の恋した0.1秒
そうして笑う柳田さんに、胸がキュンと高鳴る。
「ほら、口にクリームついてる」
そう言って、人差し指で私の口元に付いていたクリームをすくって口に含んだ柳田さん。
「ちょっ……!」
「慌てる姫ちゃんも可愛い」
柳田さんの一つ一つの仕草に何故かドキドキが止まらない。
この人はただの行きつけのカフェの店員さんで、今日、初めて話した人なのに。
今まで気にしたことなんて、なかったのに。
「あ、そろそろ時間みたい。じゃあ、姫ちゃん。残りのケーキも食べていってね?ごゆっくりどうぞ」
ペコッと頭を軽く下げた後、小さく手を振って私から離れていく。
ちょうどその時また、カランと音がした。
「あっ、いたいたっ!噂のイケメン店員さんっ!」
入ってきたのは、柳田さん目当てのお客さん。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
変わりなく偽りのない爽やかな笑顔で接客をする柳田さん。
何故かチクッと胸が痛んだ。
その時、私の視線に気がついたのか、お客さんを後ろに引き連れながら私を見て、同じく綺麗な笑顔を向けた。
あの笑顔が、私だけのものになればいいのに。
私は彼に恋をした。
綺麗な笑顔で私の名前を呼んでくれる彼に。