私の恋した0.1秒



「他にご注文は?」



きっと彼のおかげで、このカフェは大繁盛なのだろう。



お客さんが誰もいないことなんて見たことがないから。



「いえ…」



「よろしければ期間限定で今旬の桃を使ったレアチーズケーキがありますが、どうですか?」



桃は私の大好物。



もっと言えば、チーズケーキも大好物だ。



デカデカと貼られたポスターや、メニューを見るとオススメなのが伝わってくる。



今にも甘い香りが漂ってきそうなくらい美味しそう。



迷わずお願いしますと口に出そうとして、ぐっと思いとどまる。



そういえば、給料日前でバイト代が入っていない。



財布の中がスカスカだったことをふと思い出す。



───馬鹿だ、私。



目の前に大好物のこんなにも美味しそうなデザートがあるのに、手を出すことが出来ない。



こんなことならあのコスメを買うの、我慢しておけばよかった。



そう数日前の出来事を今、反省する。

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