私の恋した0.1秒


私はじっとメニューを眺めた後、



「いえ、大丈夫です」



と断りの言葉を返した。



「かしこまりました」



軽く頭を下げて、私の前からメニューを下げる。



──あぁ、大好きな桃とチーズケーキが遠ざかっていく……



イケメンアルバイト店員の手によって持っていかれた桃のレアチーズケーキの写真が載ったメニューを名残惜しく見つめていた。



今はもう8月の終わり。



夏のお祭りも、花火大会もついこの前過ぎ去ってしまった。



桃の旬の時期も終わってしまう。



次足を運べる頃には、もうないんだろうななんて考えると、ただただ、後悔だけが増すばかり。



そんな後悔をかき消すかのように、綺麗な眺めの外を見て、気を紛らわせた。

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