逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
最低最悪、軽薄御曹司
エールはフランス語で「ailes」と書き、翼を意味する。
日本有数の化粧品会社、エール化粧品は、その名の通り、フランス帰りの一人の男によって明治時代に設立された。
資本金は七十億、従業員数は八千名。事業内容は化粧品の開発、製造、販売であり、日本橋に本店を構え、海外にも関連企業を擁するグローバルな企業で--。
「なぁ。オヤジのあのくだらなくて長い話、いつになったら終わるんだよ」
「基(もとい)様、お口が過ぎますよ」
「俺はここにいる従業員の心の声を代弁してるだけだがな」
エール化粧品の本社ビル内、メインフロア。
普段はプレスリリースなどに使われるここには、朝から従業員が集められていた。
基(もとい)と呼ばれた男のスーツの胸元には、エール化粧品の象徴である翼をモチーフにした社章が輝いている。
彼の名は不二基(ふじもとい)
歳は二十九歳。
スクリーンの中にいる株式会社エール化粧品の代表取締役の息子であり、常務執行役員である。