逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 掃除婦のユニフォームのまま、沙耶は気がつけば自宅アパートに戻っていた。

 貴重品はいつも身につけておかなければならないので、電子マネーカードを携帯していたのである。

 おそらく周囲の目を引いたに違いないが、今の沙耶にとってはどうでもいいことだった。

(仕事、途中で放棄してしまった……。いや、もうどうでもいい……よくないけど、もう、どうでもいい……。)

 これが良かったのか悪かったのか、沙耶はわからない。

 ただ今は一刻も早く自分の部屋に戻って、ベッドの中に潜り込みたい。そのことしか考えられなかったのだ。

 沙耶の住むアパートは、鉄筋の三階建ての二階角部屋で、伊織の紹介でソルシエールに入った時から住んでいる。
 1DKの部屋はいつも整理整頓されて、清潔である。
 また沙耶なりのセンスで、女の子らしい可愛らしいインテリアになっている。

 常務室の半分程度の広さだが、ここが沙耶がリラックスできる、自分だけのお城だった。


 ごわごわのユニフォームを脱いで下着姿になった沙耶は、手の甲で涙をぬぐいベッドの中で丸くなった。


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