逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 だがドアの向こうに立つ基は、怯える沙耶を気遣うような口ぶりで話しかけてきた。


『……謝りに、来たんだ。俺は君に謝ってばかりだが、本当に……すまなかった』


(謝りに来た……?)


 沙耶の頭に血がのぼる。


「やめてよ、悪いなんて思ってないくせに」
『……沙耶、』
「くだらない窓拭き、金をもらう女、本当は、そう思ってたんでしょう。でもあなたにそう思われたって、別になんともないわ。そうよ、痛くも、痒くも、ありません……!」


 そう叫ぶと、あれほど泣いたというのに、また涙が溢れてきた。


(やだもうっ……なんでこんなに涙が出るの……!?)


 手の甲で必死にまぶたをこする。

 だが沙耶は嗚咽を噛み殺しながら、この瞬間すべてを理解した。

 基だから……自分はこんなに傷ついているのだと。


 痛くも痒くもないなんて嘘だった。
 だから基に泣いてるなんて知られたくなかった。
 彼の言葉にひどく傷ついたなど、知られたくなかった。



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