逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

(俺が……基が、私を、好き?)


「やめて……」


 沙耶はじりじりと後ずさりながら、倒れないよう壁に手をつく。
 それほど基の告白は衝撃的だった。


『やめない……嘘はつきたくない。やっとわかったんだ。沙耶、俺は君が好きだ。一人の女性として、好きなんだ。あの、君の歌を聴いたときから、最初からずっと、惹かれていたんだ。好きだ……沙耶。君が好きだ』


 少年のようにまっすぐで熱っぽい告白が沙耶の胸を貫く。

 これが基でなければと一瞬思わせるくらいに、その告白は沙耶の胸を打った。


 けれど好きだなんて、あり得ない。いや、あってはいけないこと。
 基が自分を好きだなんて、誰も喜ばない、誰も幸せにしない。


(もうそれ以上何も言わないで!)


 沙耶は心の中で叫ぶが、基はやめなかった。

 それどころか薄いドアの向こうで、さらに近づく気配がした。



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