逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
『沙耶、もう十分君に嫌われているのはわかっている……。ただ、それでも、君を傷つけた俺の言葉は、何一つ真実じゃないってことを伝えたかった』
それから、おそるおそるといった風に、基がドアをノックする。
『沙耶、そこにいるのか? 少しでいい。顔を見せてくれないか……直接、謝りたい……』
沙耶は小動物のように息をひそませ、そのままゆっくりと後ずさる。
見えるはずがないのに、見えるような気がしたのだ。
あのドアの向こうで打ちひしがれている基の姿が。
沙耶に許しをこう基の姿が、それでも沙耶を諦めないと、美しい目を輝かせる基の顔が見えたような気がした。
「……帰って」
沙耶の蚊の鳴くような声細い声が、基に届いたかどうかはわからない。
けれど真っ白の頭のまま、沙耶はその場を離れ、逃げるようにベッドに潜り込んだ。