逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
捨てきれない情熱

 どれくらい息を潜めていただろう。


 沙耶は枕に顔を埋め、じっと身動きしないまま丸くなっていた。
 しばらくして壁の時計を見上げると、一時間以上経過している。


 さすがにもういなくなっているだろう……。


 沙耶はベッドからゆっくりと降りて、ドアへ近づき、ドアスコープから外を覗いた。


「……いない」


 ホッとしつつ、念のためドアを開けて顔だけ出してみた。
 周囲をぐるりと見回しても、やはり人気はない。
 ただ雨がしとしとと降り続けて、ひんやりとした空気が流れているだけである。


 沙耶の部屋は二階なので雨がドアから振り込むことはないが、日が落ちて気温が低い。

 急いでドアを閉めようとして、それからドアノブにビニール袋がかかっているのに気付いた。

 手にとって中を覗き込むと、小さなブーケとプリンが入っていた。
 基が持ってきたに違いない。


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