逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 基の提案に、すぐに「わかりました」と答えることはできなかった。


 正直言って、今でも基に言われたことは確かにものすごく腹がたつし、悲しくもあるのだが、基の身を投げ出すような謝罪と、そのあとの彼の誓いに似た告白を聞いてしまったために、全てが吹き飛んでしまった。

 だから、二度と同じ過ちを繰り返さないという基の謝罪を受け入れて、今まで通りソルシエールで働き、エールビルに通うことに異存ない、はずなのだ。


(でも……。そんなことをしていいのだろうか。この人は冷やかしでもなんでもなく、私のことを……。)


「沙耶……」


 沙耶の沈黙を「ノー」ととったのだろうか。

 基は悲しげに眉を寄せ、視線を一瞬テーブルの上に落とす。
 だがまた顔を上げ、沙耶を見つめた。




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