逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「まぁ、とにかく、そういう風に言われても、やっぱりあなたは派遣先の常務だし、私は下請けというか、傭われの身分なんだから、なんていうか……」
「沙耶。俺はエール化粧品の常務執行役員である前に、君のことが好きな、一人の男だ。そういう風に見てもらえないか」
「そんなの……無理よ。あのビルは高すぎる。あそこにいるあなたを一人の男として見ろなんて、難しすぎます」


 そうなのだ。いくら基にそんなことを言われても、理性が「冷静になれ」と邪魔するのだ。

 エール化粧品のエールビル、常務執行役員の不二基。どうやったって切り離すことができない。
 自分とは同じ場所にいない人だと、考えずにはいられない。


「……なるほど、わかった」


 そこで基は両腕を組み、深いため息をつきうなずいた。

 やっとわかってくれたのかと一瞬ホッとしかけた沙耶だが、
「やっぱりデートしかないな」
「は?」
基が驚くようなことを口にした。



「今度の日曜日、デートしよう。決めた」
「きっ、決めたって、そんな」


 住む世界が違うと言っているのに、なぜそんなことになるのだ。

 だが基に引く気はないらしい。



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