逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「エールビルの中じゃダメだって言ったのは沙耶の方だ」
「そうだけど」
「武士に二言はないだろ」
「私、武士じゃありません」
「そうか? 沙耶のまっすぐな心意気は、武士っぽいところあるけどな」
基は笑いながら身を乗り出し、それから真剣に沙耶の顔を覗き込んできた。
「沙耶、俺と過ごしてみて、それでもどうしても俺が無理だと思ったなら、そう言ってくれて構わない。君にしつこくするのはやめる。ただ、もちろん、簡単に沙耶につまらないと思われないように努力するし、そんなことには絶対にならないと宣言しておく」
そして基は、にっこり微笑みながら空になったスープ皿を持ち上げた。
「ごちそうさま、とても美味しかった」
「いえ、お粗末さまでした……」
沙耶は唖然としながら、機嫌がよさそうな基を見上げる。
(デートって、本当に……? どうして……こんなことに……。)