逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「なによ、俺のって」
「いいだろ、このくらい」


 そして基は、ゆっくりと沙耶の体を抱きしめる。


「今これ最高のシチュエーションじゃないか? キスしたいな……いやでも我慢する。えらいなぁ俺。褒めて、沙耶……」
「バカ……」


 そして沙耶も、思い切って基の背中に腕を回していた。


(大きくて、あったかい……。)


 そういえば、異性の体に抱きついたのは、大人になって初めてだということに気づいた。

 こんな風に誰かと抱き合える未来など、十年近く考えたことがなかった。


(そんなはずないって思うけど、もしかしたらと思ってしまう。私の考えは甘いんだろうか……。)

 だけどこの一瞬のことを覚えていれば、きっとこの先も頑張れる。

 そう思う沙耶であった。


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