逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
そんなある日のことである。
「ハウスキーパーですか?」
ソルシエールでいつものように報告書を書いていると、心底困ったという表情の伊織から、
「明日、ハウスキーパーに行ってくれないか」
と、打診された。
ソルシエールの業務の一環として、オフィスへの派遣以外にも、個人宅のハウスキーパーがあるのである。
「それはもちろん構わないですけど、私でいいんでしょうか?」
基本的にハウスキーパーは年配の女性が担当していて、沙耶は研修を含めて数回しか経験がなかった。
「ああ、お得意様のご友人のお家でね。いろいろ頼みたいこともあるから、二十代の女性がいいって言うんだよ。うちで二十代っていったらあんたしかいないしね。あっ、でも派遣先は私とそう変わらない女性の独り住いだから、安心おし」
無理を言うから、臨時ボーナスもつけておくからね、と伊織は笑う。