逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
そして彼の横に立っている理知的な男は、神尾湊(かみおみなと)、三十歳。
基の秘書であり、右腕でもある。
月に一度、朝一番に全社員が集められ、エールビルのてっぺんにいる、社長の訓示を聞かされる。今はその真っ最中だった。
もちろん常務の基も例外ではなく、こうやって少し離れたところで、秘書と真面目な顔をして立っている。
「どうせ映像なら、メールで全社員に送ればいいと思わないか。なぜいちいちここに集めるんだ?」
基の問いに、神尾は苦笑する。
「それ、見ると思いますか?」
「……思わない。俺ならすぐゴミ箱に捨てる」
「だからでしょう」
「だな」
そして基と神尾は顔を寄せ合いクスクスと笑う。
ずいぶん気安い態度ではあるが、神尾は秘書である以前に、幼なじみなのだ。