逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
恋するだけではいられない

 基の顔が、声が、忘れられない。


 いくら胸をかきむしっても痛みは引かず、言いようのない後悔が、後から後から波のように押し寄せてくる。

 そして結局、沙耶は一睡もできないままエールビルに出勤していた。




 バックヤードで身支度を整え、三角巾をきちんと頭に巻きつけていると、
「あれっ、沙耶ちゃん目が赤いけどどうしたんだい?」
同じく身支度をしていたソルシエールの同僚が、心配そうに顔を覗き込んでくる。


「レンタルしたDVD、延長しかけてて、慌てて見たんです」
「あー、あるある。そういうの。うちの息子もよくやってるよ」


 同僚の指摘を、沙耶は笑って誤魔化す。



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