逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
(まだそんなに腫れてる?)
確認のために鏡を見ると、確かに目が赤かった。
それどころか、全体的に普通ではない、しおしおのヨレヨレである。
(あー、こんなんじゃダメだ!)
沙耶はパチンと両手で頬を叩き気合を入れ、冷凍室を開けた。
ソルシエールに与えられている控え室には、小さな冷蔵庫が置いてあるのだ。
頂き物でもらったケーキについていた保冷剤をハンカチで包み、目の上に乗せた。
そうやってしばらく目を冷やしながら、沙耶はまたぼんやりと、基のことを思う。
(情けない……。自分が臆病だったせいでこんなことになったのに……私まで傷ついてるみたい。)
実際のところ、沙耶は基を傷つけたことに傷ついていたのだが、自業自得なのでそのことからは目を背けていた。
(今思えば、私、ただ謝罪の言葉を繰り返すばかりで、大事なことを伝えられなかった……。)