逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 今日、常務室に基はいるのだろうか。

 昨日のあの様子だと、基が自分に会いたがっているとは到底思えない。

 ではいない場合、手紙はあるのだろうか。
 昨日、基は手紙を握りつぶしてしまった。

 会いたくないと避けられる前提だと、その望みは薄いだろう。


(基と話がしたい……。私の気持ちを聞いてもらいたい……。)


 私の気持ちと考えて、心臓が締め付けられるように痛くなる。
 ちゃんとうまく言えるだろうかと、不安しかない。

それでも沙耶は、常務室に行かないわけにはいかない。


「じゃあ行ってきますね」
「はい、よろしくねー」


 沙耶は仕事道具のカートを押しながら、最寄りのエレベーターへと乗り込んだ。



------



< 220 / 322 >

この作品をシェア

pagetop