逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「基様、お行儀が悪いですよ」
「……」
「基様」
神尾の叱責も右から左に聞き流しながら、基は常務室のソファーに体を横たえ、ぼうっと天井を眺めていた。
(なるほどこれが失恋というやつか……。なかなかヘビーだな。指の一本だって動かしたくないし、食欲もない。この世の全てが無味乾燥で、目の前が真っ暗だ。おまけに頭痛もいつもに輪をかけて酷いが、面倒くさくて薬を飲む気にもならない……。)
三浦海岸のデートから、沙耶との距離が縮まっているようなそんな気がしていた。
実際、最初の出会いから順を追って考えてみれば、確実に縮まっていたと言える。
沙耶は基にとってただ一人の特別な人だった。
だがそう思う男は自分一人ではなく、よりにもよって、自分の幼馴染の一人でもあったのだ。