逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「なぁ、湊」
「なんですか、仕事をやる気になりましたか」


 神尾は働かない基の代わりに、基のデスクでパソコンのキーボードを叩いている。


「美鶴と俺って何が違うんだ」
「……はい?」


 神尾の顔に「このバカは何を言っているんでしょう?」と書いてあるが、基は気にせず問いかける。


「お前が女なら、どっちを選ぶ」
「断然美鶴です」
「即答かよ!?」


 基は跳ねるように上半身を起こし、忠実な部下であり、親友であるはずの神尾を見つめる。

 けれど神尾は眼鏡のフレームを指で押し上げながら、しっかりとうなずいた。


「当たり前でしょう。女性は減点方式で男性を選びますからね。上の上の限りなくてっぺんにいるけれども、欠点だらけで振り幅が大きい軽薄な女好きと言われる基様よりも、安定して誠実な、エリートサラリーマンを選びます。当然です」



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