逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「ずいぶんはっきり言ってくれるな」
「その方がよろしいかと思いまして。それに美鶴は、きっと秘書を困らせることもないでしょうしね」
「……まぁ、確かに俺は秘書を困らせるところがあるな」
「ええ、困らされてばかりです」


 まるで流れる水のように、さらさらと悪口を言われたが、概ね正しいので反論のしようがない。


「で、鎌倉の件、どうするんですか。もうあれこれと手続きやらなんやら済んでしまったんですけど」
「あー、うん……。少し考える」


 基は長い脚を組み、ソファーの背もたれに背中を押し付けた。


(軽薄な女好きか……。確かに俺はそんな男だったな。恋愛は楽しむものだと言ってはばからなかった……。)


 だが現実は違った。

 恋は基を何度も激しく打ちのめし、基のプライドを叩き折り、泥で汚した。楽しむ余裕などほとんどなかった。


(だがそれでも……沙耶が俺に向けて微笑んでくれたら、すべての痛みが吹っ飛ぶんだ。)



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