逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「基、ごめんなさい……こんなの、やっぱり、だめっ……」
「沙耶……」


 基は切れ長の目を大きく見開き、泣きじゃくる沙耶を見つめていたが、一方激昂した広隆は、厳しい顔つきで沙耶を見据え、指差した。


「ふんっ……よっぽどこの掃除婦の方が、身の程を知っているようだな!」


 その瞬間である。

 沙耶の目の前に、基が飛び出した。同時にガツン、と大きな音がして、それから激しく何かが倒れる。

 沙耶は目の前の光景が信じられなかった。

 何ということだろう。
 基が父の胸倉をつかみ、拳でその頰を殴ったのだ。


「オヤジ、次はないと言っただろう」


 基は床に倒れた父親を見下ろしながら、顔をしかめ右手を振る。


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