逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「基っ……オマエというやつはっ……」
「一応言っておくが、好きなのはずっと俺ばかりだ。でも諦められない。愚かだと笑うか?」


 母親譲りの灰色の瞳が、強い光を放つ。
 その目が自分は愚かではないと宣言していた。


「基様!」


 そこに飛び込んできたのは神尾である。


「あっ、社長っ……!」


 神尾が片手で顔を覆い、盛大なため息をつく。彼にはまるでこの光景が予測できていたかのようだ。


「基様、やっちゃいましたね」
「すまんな、湊。ちなみにたった今勘当されたところだ」


 基の言葉に、神尾は目を丸くする。
 

「……そうか。じゃあお前はもう俺の上司じゃないってことか」
「そうなる」


 そして基は、呆然と立ち尽くしている沙耶の手をつかんだ。



< 237 / 322 >

この作品をシェア

pagetop