逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「なぜって……本気で惚れた女を守らない男がどこにいるんだ。オヤジも三十年前は同じ気持ちになったと思ってたんだけどな」
「なっ……」
基の思わぬ指摘に虚をつかれた広隆は言葉を失う。
そして基はそのまま常務室を出てしまった。
エレベーターに乗り、基は地下の駐車場のボタンを押し、それからすっきりしたような表情で、隣の沙耶を見つめた。
その清々しい表情に、沙耶は眩暈を覚える。
「基……なんで?」
基は今自分がやったことの重大さが理解できていないのではないか。
こんなことが現実にあっていいのかと、沙耶は震えた。
だが基は至極真面目な表情で、沙耶の顔を覗き込み、そして穏やかに微笑む。