逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「だから……私、基のこと、好きだけど……諦めなくてもいいの?」
一人で生きていくことに精一杯で、恋なんて贅沢だと思っていた。
個人的に好意を持たれても、人は面倒ごとを避けるものだから、結局自分は、誰にも選ばれない存在なのだと思っていた。
そうじゃないかもしれないなんて、簡単に信じられそうになかった。
だがどうだろう。
目の前のこの男は、全てを投げ出し、沙耶に奇跡を見せたのだ。
緊張と、優しく自分を見つめる基の眼差しが優しいから、また涙が浮かぶ。
「愛してるよ、沙耶」
基の灰色の目が沙耶を静かに見つめ、それから手をつないでいない方の大きな手が頬に触れる。