逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「君が俺を愛してくれたら、俺は誰よりも強くなれる。俺に力をくれるのは、沙耶だけだ」
エール化粧品の翼の社章を捨てたはずの基の言葉は、沙耶を愛の翼で包み込む。
「基っ……」
ずっと満たされなかった、忘れかけていた、基から降り注ぐ慈雨に似た愛情に、沙耶は言葉を見失った。
だから、泣きながら抱きつくしかなかった。
背中に回る基の強い腕の力に身を任せた。
そんな沙耶の気持ちが痛いほど伝わるのだろう。基は、震える沙耶を、強く、優しく抱きしめる。
そしてエレベーターが地下駐車場に到着した。
基は神尾から渡されたキーケースをポケットから取り出し、手の中でくるりと回すと、沙耶の顔を上げさせ、指で頰の涙をぬぐった。
「沙耶、行こう」