逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「もう一回」
「えっ?」
「可愛く言って? ああそうだ。ついでにこう、首とか傾げてみたらどうだろう。多分すごく可愛いぞ」
「なっ、何言ってるの!」
どう考えてもからかわれている。
だが、からかわれているとわかっていても、基が近いから、素敵だから、慌ててしまう。
「沙耶、好きだ。大好きだ。キスしたい……」
「いまっ?」
したくないわけではないが、たった今、沙耶と基は手に手をとってエールビルを飛び出すところではないか。キスどころの話ではないような気がする。
「後は後でするが、運転してたらキスできないということに気づいたんだ。致命的だろう」
妙に真面目な顔で言われるから、沙耶は思わず笑ってしまった。
驚かされたり、ドキドキさせられたり、笑わされたり。
基といると当分退屈する暇もなさそうである。