逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
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「着いたら起こしてやるから、それまでおやすみ」
「ん……」
まるで生まれたての赤ん坊か何かでも運ぶかのように、基は沙耶の頭と背中を支えながら、助手席のシートを倒して寝かせる。
(キスって……こんなだったの? すごいドキドキして、訳わかんなくて、涙が出そうだった……。)
体感的には恐ろしく長い間、基の唇に触れられていたような気がする。
だがおそらくたった数分の出来事なのだろう。
基のキスは優しく、甘く、情熱的で、触れる先からとろけてしまいそうな気分になった。
ぼうっとする視界の中、沙耶はふわふわした気持ちで、シートベルトをつけ自分の額にキスを落とす基を見上げたが、
「そんな目で見られたらまたしたくなる。だから寝てろよ」
と、言われて、慌てて目を閉じた。