逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
(だけど眠れるわけない……心臓、ドキドキしすぎて壊れそうだもん……。)
「んー、サラサーテか……まぁいいか」
基がオーディオに触れる気配のあと、それから艶やかなヴァイオリンの音色がスピーカーから流れ始める。そして車が滑るように発進した。
「私、好きよ……ツィゴイネルワイゼン……」
「沙耶は普段はしっかりしてて冷静だけど、情熱的だしな」
「そう……?」
「ああ、そうだ。じゃないと俺をダンスになんか誘わないだろ。あれで俺は決定的に恋に落ちたわけだが……でも遅かれ早かれ、俺はやっぱり沙耶を愛していたと思う」
基の告白の言葉に、目を閉じていても頰に熱が集まっていく。
「基、あんまりそういう……甘やかすようなこと、言わないで……」
「どうして」
「私が私じゃなくなるような、そんな気がするから……ダメになるかも、しれない……」