逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 自分を形作ってきた何か、頑なな意思のようなものや、意地っ張りなところが、基に大事にされればされるほど、失くなってしまいそうな恐怖を覚えるのだ。


「愛されることがダメになることなのか?」


 少し不思議そうに基が問いかける。
 そう言われてみれば確かにおかしいような気がする。


「もしかして沙耶は、自分が変わるのが怖いのか」
「……そう、なのかも」


 すると、基がクスッと笑う気配がして、目を閉じた沙耶の頭が軽く撫でられた。


「沙耶は自分のことを、マイナス目線で見すぎなんだな」
「え……?」
「小さい頃から苦労したから、志倉沙耶はこうあるべきなんだって、飲み込んで……。だから沙耶は頑張り屋の真面目な女の子になったんだろうけど、本当の沙耶はどうなりたいか、俺は聞いたことがない」
「本当の、私……」


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