逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
本当の私なんて、考えたことがなかった。
思わず無心になる。
「だから……沙耶は安全なところで、大事にされて、幸せになっていいんだってこと、理解するべきなんだ」
基が何気無く口にしたその言葉は、沙耶の胸の真ん中を、撃ち抜いた。
沙耶が自覚すらしていなかった心の中の石を、基が貫き、壊し、そしてぽっかりと空いた穴を癒し、抱きしめてくれたような気がした。
この恋がどうなるかなんて、沙耶にはわからない。
けれどこの一言で、沙耶はもういつ死んでもいいような、そんな気分になれた。
沙耶は浮かんでくる涙を隠すように手の甲を額に乗せ、そして背中を丸めた。
「おやすみ、沙耶」
「うん……ありがとう」
(基は私の天使だ……。神様。基に出会わせてくれてありがとうございます。)