逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 確かに……基に「行こう」と言われた時、どこにでもついていこうと思った沙耶である。

 そこにどんな困難があったとしても、基と二人なら頑張れると思ったのである。

 だがウトウトしてから約一時間後、基に優しく起こされて、目を覚ました助手席から見た景色に、沙耶の心は激しく動揺した。




「基……ここって」


 駐車場から少し離れた、玄関まで長く続く石畳のアプローチ。新緑の緑が目に眩しい植え込み。
 可愛らしい二階建ての洋館の壁には、過ぎ去った年月を感じさせる蔦がびっしりとつたっていた。

 沙耶の記憶の中の、幸せの象徴であった鎌倉の別荘が、目の前にあるのだ。


「なぜ、どうして? ここは、天国なの?」


 目の前の景色が信じられず、助手席から降りた沙耶は、一歩も歩けなかった。


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