逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「沙耶、ここは天国じゃない」
基は運転席から降り、
「勘当される前に買っといてよかった」
呆然と立ち尽くす沙耶を支えるように、後ろから抱きしめた。
「か、買った……?」
「ああ、俺の個人資産の一部で買ったから、大丈夫だ。心配ない」
「いや、そうじゃなくて……」
あっけらかんと、沙耶の首筋に顔を埋めて幸せそうな基に、沙耶はクラクラとめまいを起こしそうになる。
個人資産の一部?
買ったって、別荘は簡単に買えるものなのだろうか。いや、簡単に買えるものではないし、まずそんなノリで家一軒を買うというのはアリなのだろうか。
そういえばこの人は、一時間ほど前に勘当されはしたが、日本有数の化粧品会社の御曹司だったと、改めて思い知らされて、沙耶は言葉を失うしかない。
「前、話してくれただろう。沙耶の子供の頃の、この別荘のこと。手続きは全部神尾に任せてたから……俺も見るのは初めてなんだが……ん?」